睡眠に安心している『隠れ睡眠不足』

現代人の多くが、表面に現れず隠れて存在する「自覚できない睡眠不足」を抱えており、しかも想像以上に心身に悪影響を与えているという研究の結果が、

科学誌「SCIENTIFIC REPORTS」に掲載されました。

研究対象は「適切な睡眠習慣で生活している」という自信があり、日中の眠気・睡眠の質・量ともに問題のない20代の男性15名です。

事前調査での彼らの通常の平均睡眠時間は、日本国内の20代男性の標準的な睡眠時間7時間22分でした。

実験内容は、9日間にわたって1日当たり12時間、完全に防音・遮光された特殊な寝室で眠ってもらい、その間は途中で目が覚めても寝室から出られないというものです。

言い換えれば必要としている睡眠が絞り出されるということになります。

彼らの実験の初日の睡眠時間は平均10時間33分で、実験期間中は睡眠に集中でき実験期間中に睡眠不足が徐々に解消されるため、睡眠時間は日に日に短くなり、

最終的に15名平均では8時間25分(=必要睡眠時間)という結果となりました。

 

  • 睡眠不足は感じていなくても、知らぬ間に心身に負担がかかっている。

 

通常の習慣的睡眠時間(平均7時間22分)は実験結果の必要睡眠時間よりも1時間も短かったにも関わらず、自覚的には眠気も含めて全く問題を感じていません。この研究の前後でインスリン、甲状腺ホルモン、ストレス関連ホルモンなどの内分泌機能を調べたところ、9日間後の睡眠不足を解消した後にはより望ましい数値になりました。つまり、今回の被験者は毎日十分な習慣的睡眠時間を確保できていると感じていましたが、知らぬ間に心身に負担がかかっていたことが明らかになったのです。

 

通常、睡眠不足時に削られるのは「浅い睡眠とレム睡眠」で、今回の被験者でも不足していた1時間の大部分も同じ結果でした。

深い眠りは大脳皮質が発達した人間にとっては、脳を冷却して休ませ記憶の固定や索引付けなどと必要不可欠ですが、

内分泌機能を始めとする心身機能にとっては、浅い眠りは欠かすことのできない大事な睡眠です。短時間睡眠で大丈夫と思っている人も、

この点を考えていかなければなりません。

 

通常の“睡眠不足の自覚症状がない睡眠習慣を送っている”という安心感がある人はかえって危険性が高まる可能性もあります。

睡眠不足の自覚症状が無い人の中にも、睡眠不足が隠れていることがあるのです。その場合、日ごろ睡眠不足で不快を感じる人よりも危険だといえます。

毎日の睡眠不足を積み重ねていかないようにしていくことが必要です。

最後に、『自分の必要睡眠時間』の測定法をを紹介しています。ご参考下さい。

**図をクリックすると拡大します。